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2019年11月25日

昭和型組織のガラパゴス

 働き方改革、生産性改革、ダイバーシティ促進、同一労働同一賃金など組織人事マネジメントを取り巻く環境は激変していきます。ただ、こうした環境変化に上手に対応できず、時間ばかりを浪費し、いまだに昭和型組織マネジメントを引きずり、気がついてみればガラパゴス化している組織も多いのではないでしょうか。
 ガラパゴス化している組織の特徴として、以下の点を指摘しておきたいと思います。

<農耕民族的ワークスタイル>
 個人のワークスタイルとして頻繁に議論される視点のひとつとして「農耕民族的ワークスタイル」か「狩猟民族的ワークスタイル」かの議論があります。「農耕民族的ワークスタイル」とは、担当業務を個人で完遂できず、かつ個人の能力だけでは業績・成果に差が出にくいワークスタイルです。「狩猟民族的ワークスタイル」とは、担当業務を個人で完遂でき、個人の能力やスキルにより業績・成果に大きな差が出るワークスタイルです。ガラパゴス化した組織では、農耕民族的ワークスタイルが主流となる傾向にあります。
「農耕民族的ワークスタイル」を理解する上で興味深いエピソードをご紹介します。

A:「私の父親は定年退職した後、都内のマンションを売り、母親と田舎暮らしを始めました。家の裏手に地主が住んでおり、その地主さんと先日こんな立ち話をしたそうです。」

地主:「〇〇(Aさんの父親)さんは働き者ですね。裏で農作業をしながら時々見ていたけど、いつも家庭菜園に出て農作業していますね。ありゃあいい野菜ができますわ。」

父:「この辺りは人口も減少し、土地の売買があまりないようですね。」

地主:「ああ、見ず知らずの人間には売れねえ。でもあんたならいいよ。あんたは働き者だし、あんたの働きっぷり見てたら間違いねえしな。」

 この短い会話の中に、実話日本人の働き方のDNA、つまり農耕民族的ワークスタイルの本質を垣間見ることができるかと思います。

 百姓を中心とした農作業従事者は、家族全員で足並みを揃えて働くことが求められます。田植えの時期から収穫期までかなりの長期間足並みを揃え続けます。当然一緒に過ごす時間も膨大になり、周囲の働きぶりをよく観察することができます。農作物は、手をかければかけるほど良質な収穫物が出来ることも経験値から学んでいます。農作業従事者は、何百にも及ぶ細かい作業ができて一人前です。天候を相手にしているため仕事に終わり(締め切り)がありません。結果的に長時間労働になり、あの人がまだ畑や田圃にいるから私も作業を止められないとう意識が働きます。

 令和時代の企業組織を見渡してみてください。農業(農作業)を生業としている企業組織もあるでしょうが、その多くは製造業やサービス業であり、中には最先端のテクノロジーを活用したビジネスモデルを標榜している組織も多いです。しかし不思議なことにそこで働くビジネスパーソンは、農耕民族的ワークスタイル(=昭和型組織のガラパゴス)を強いられているケースが多いようです。

 上司が帰るまで帰れない、ムダな会議や行事が多く、多くの時間を職場の上司と過ごす。極端な場合週末も接待ゴルフや上司の私的な用事に駆り出される・・・

 こうした現象の背景には、日本型組織が背負った宿命ともいえる農耕民族的DNAが存在することを知覚することが重要です。知覚した上でこの先どうするかです。

 平成時代という失われた30年を経て、新しい時代に入りました。

 令和時代に農耕民族的ワークスタイルから脱却し、真の働き方改革を実現されたい経営者の方はお気軽にメッセージをお待ちしております。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)