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2020年2月10日

副業・兼業者の労災保険

近年増加している副業・兼業労働者をめぐっては、現行労災保険法において、副業・兼業労働者が1つの事業場で労災に遭った場合に、別の就業先の使用者から受け取るべき賃金額が、労災保険給付の給付基礎日額(労災保険法8条1項)の算定基礎に含まれるか否かという問題がある。この点につき、行政通達および裁判例は、算定基礎は2事業場から支払われた賃金の合計でなく、労災の発生した事業場で支払われる賃金のみとするが、それでは副業・兼業労働者が1つの事業場で労災に遭ったことにより全就業先で休業を余儀なくされた場合に、労災に遭わなければ受け取れたはずの本来の賃金額と実際の労災保険給付額が大きく乖離し、被災労働者とその家族の生活が困窮する可能性が高いという看過できない問題が生じる。本稿ではこの問題に関する現行制度を概説し、裁判例および従来展開されてきた議論について紹介した上で、3つの論点につき、副業・兼業労働者のすべての就業先に係る給付基礎日額の算定基礎を合算することの妥当性について論じる。今後の方向性としては、労働基準法の災害補償責任を使用者集団が当然に負うべき責任として個別使用者の責任よりも広く捉える解釈に柔軟化すること、現行メリット制による負荷は過大ではなく合理的な対応策もあること、複数の就業先における労働時間を通算するしくみを構築することを提示している。その上で、労働者保護の観点から、労働者の生き方・働き方の多様化に合わせて、労働者の従前の生活水準の維持を最優先するために合算が不可欠であると結論づける。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)