2020年4月3日
コロナウイルスが猛威を奮っています。人事労務界隈では、4月1日からの働き方改革も相まって、在宅勤務やテレワークが普及するムードが高まっています。ICT(情報通信技術)を活用し、時間と場所に左右されない柔軟な働き方の普及は多くの日本企業にとって重要なテーマかと思われます。一方で既に多くの問題や課題も顕在化しています。 各種調査、企業へのヒアリング結果を集約すると、特徴的な問題や課題は以下の5点です。 1.そもそもテレワーク可能な業務が社内に存在しない 2.環境の用意とセキュリティ対策が必要 3.コミュニケーションが希薄になるという懸念がある 4.正確な勤務時間が把握しにくい 5.人事評価が難しい 上記5点に関し、組織人事マネジメント、人事労務管理の視点からコメントして参ります。 1.そもそもテレワーク可能な業務が社内に存在しない よくわかります。業界、業種、職種によってはテレワークが不可能な場合も多いです。 こうした業界、業種、職種では無理にテレワークを導入する必要はなく、可能な部署や社員から部分的に導入し、その効果を検証することからはじめたらいかがでしょうか。テレワーク導入が目的ではなく、テレワークという手段を通じて働き方改革を実現することが目的です。 2.環境の用意とセキュリティ対策が必要 テレワーク導入に消極的な企業や組織、上司の言い訳です。現状の情報セキュリティ技術では、ほぼ全てのケースのセキュリティ環境は担保できるハズです。勿論一定のコストはかかりますが、できるだけローコストでセキュアな環境を整備することも充分可能です。 3.コミュニケーションが希薄になるという懸念がある 大きな誤解です。対面でのコミュニケーションに慣れている人間にとって、バーチャル空間でのコミュニケーションはハードルが高く感じているようです。しかし、若い世代を中心にSNSやZoomなどネットワーク環境でのコミュニケーションは日常になっています。食わず嫌いを止め、環境変化を受け入れ、柔軟にテクノロジーを活用する意識変革が重要です。企業としても、積極的に導入し、意識変革を促し、サポートしてみてください。それでも対応できない社員に対しては厳しい対応を迫るくらいの覚悟が必要です。 4.正確な勤務時間が把握しにくい 大きな誤解です。PCログやネットワーク接続時間など、勤務時間を把握しようと思えば充分可能です。一方で、そもそも詳細な勤務時間の把握がどこまで意味のある行為なのかについて再考してみましょう。仕事は、投入時間ではなくアウトプット(成果)で評価するという視点を再度確認し、そのための勤務時間管理の適正化を図りましょう。 5.人事評価が難しい 上記4.とも関連しますが、人事評価は本来柔軟であるべきです。各企業、組織、業務環境に応じて評価項目や指標を柔軟に見直し、会社・組織業績や生産性に見合った評価を実現することは難しいことではありません。むしろ、人事評価に嫌悪感を抱く、社内抵抗勢力の意識改革の方が困難である場合もあります。 以上の通り、テレワーク普及を阻害する要因の多くはマネジメント領域の問題です。決してITスキルやテクノロジーの問題ではありません。ただ、マネジメント領域の問題であればこそ厄介で複雑であることも事実です。是非、弊社のような外部専門機関を有効活用し、スピーディーな課題解決の実現を図って頂ければ幸甚です。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長
1996年早稲田大学卒 2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉 1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。 その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。 現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長 ■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員 ■2級キャリアコンサルティング技能士 ■産業カウンセラー ■大学キャリアコンサルタント ■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)