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2020年5月26日

取引コスト理論から考える相互不信

コロナ騒動に対する政府の対策は残念ながら愚策が多く、評判が悪いようです。
特に自粛要請という法的拘束力のない指示は、飲食業界を中心に経営上のダメージを与え、地域経済を混乱させる結果となりました。その一番の原因は、要請に対する補償がなく、指示が一方的で片務的であるということです。

経済学の基本に『取引コスト理論』という考え方があります。不確実性で錯綜した取引状況では、全ての取引当事者は情報の収集、処理、そして伝達能力に限界があり、互いに相手を十分知ることができないので、相互に機会主義的に騙しあいをする可能性があります。(モラル・ハザード問題)

この内容は、現実のビジネスシーンでも多々散見されます。

コロナウイルスという不確実で先が見通せない状況下において、国家(行政)と国民が不信感を募らせ、機会主義的行動(日和見主義的行動)に出ることは大変危険です。

ビジネスシーンでも、経営層と従業員との間で取引コスト理論が該当するケースが考えられます。特に危機に瀕した場面で、経営層が情報を隠蔽し、従業員の行動に制約を強いつつ、機会主義的(日和見主義的)発言で組織(社員)を混乱させるという場面です。労使関係が懐疑的関係になり、騙しあいを繰り返し、組織を壊滅に追い込みます。こうした結末は何としても回避したいところです。

国家と国民、使用者と労働者などの組織と個人の関係は、信頼関係をベースとした契約(取引)で成立しています。相互が良好な関係を構築・継続するために必要な様々な契約(取引)が必要です。契約(取引)の諾否を決定するためには、正確で十分な情報の遣り取りが欠かせません。一方が隠蔽したり、歪曲したりすると、契約(取引)にコスト(金銭、時間、精神的苦痛など)を要し、契約が(取引)が成立しません。契約(取引)が成立しなければ、眼前の問題や課題は解決せず、不確実で先が見えない状況は継続します。

今回のコロナ騒動を契機に、取引コスト理論という視点から、皆さんの組織における労使関係や上司・部下関係を眺めてみてはいかがでしょうか。
組織人事コンサルティング部長 岡田 英之

組織人事コンサルティング部長

岡田 英之

早稲田大学卒
東京都立大学大学院  社会科学研究科  経営学専攻  経営学修士(MBA)
国家資格  キャリアコンサルティング技能士
産業カウンセラー