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2020年7月2日

“チームワーク”再考

 昭和時代までの多くの日本企業は創造性に富み、世界市場で様々な旋風を巻き起こしていました。平成時代以降、日本企業の存在感は年々薄れ、グローバルランキングにおいて、アジアを含む多くの国々の後塵を拝しているのが実態です。令和時代に入り、そろそろ新しい日本企業の強みを確立すべく、異質な知識(異能)を上手にハイブリッドし、付加価値を創出しなければなりません。付加価値創出の重要な組織マネジメントとしてチームワークの活用が有効です。
 こんなことを言うと「今更チームワークの話かよ!飽きたよ」という声が聞こえてくるかも知れません。しかし、ここでイメージするチームとは、同質性の高いチームではなく、異なる専門領域や豊富な経験を持つ自立したメンバーで構成されるチームです。知識の多様性を活かせなければ、付加価値の創造は難しいでしょう。それは、付加価値創造が同質よりも、異質の観点や知識の組み合わせを好むからです。
 では、専門知識を持つメンバーを集めれば価値が創造できるかというと、そう簡単な話でもありません。専門性がなければ問題の本質を見抜けませんが、専門知識は同時に視野を狭めてしまうこともあります。例えば、専門分野の異なる医師に、同じレントゲン写真を提示し、病名を診断してもらうという実験があります。面白いことに、自分の専門外の病気でも自らの専門知識に沿った診断を下してしまう医師が存在しました。これは医師に限らず、専門性が高まると物事の判断や解釈が自分の専門領域に捕らわれやすくなることを暗示しています。さらに、チームの多様性が高まると一人ひとりが各々の領域から問題設定や課題解決を模索するため、合意形成が難しくシナジーが生まれ難くなります。したがって多様性の高いチームの成功には、チームが内部の専門性を生かしつつ、メンバーの異なる観点をつなぎ合わせて広い視野に展開できるかどうかが最重要です。
 多様性を活かす土壌が何かと考えると、共有認知モデル(shared mental models)が一般的に知られています。チームメンバー達は、役割意識や互いに対する期待、ゴールや戦略、価値観や好みなど、様々な考え方(認知モデル)を持っています。これらの考えをチームで共有し理解する必要があります。チームに協働や議論のための前提が揃って初めて、会議で提案される様々な意見の価値が理解しやすくなり、議論が円滑に進みます。このことは、従来我々日本人が得意としてきた阿吽の呼吸かも知れません。世界中で集められたチームワークのデータからも、共通認識の発達はチームワークの向上を助け、業績を高めることが示されています。一方で、共有認知モデルの未発達なメンバーが意見を交わらせても合意形成には至らず平行線をたどります。
 多くの日本人はチームワークを得意と感じています。しかし、同質性の高い日本企業内の協働では、文化的・社会的価値観や教育水準の類似性がチームワークのための前提を整えてしまうため、共有認知モデルをメンバーが精力的に構築せずにすむことが多いです。一方、世界市場で勝つためには、同質性を離れ、知識、経験、人種、性別、宗教などの様々な多様性を融合する必要があります。異質を抱擁し、思考の異なるメンバーの中に共通の理解や前提を意識的に打ち立てること。このことが令和時代に求められるチームワークではないでしょうか。
 日本企業はこれまでかなりの期間、同質性を好み、異質性や多様性を抑え込む組織を維持してきました。今後の生き残りをかけて日本企業は多様性を活かすチーム作りへと大きくチェンジマネジメントするタイミングです。
組織人事コンサルティング部長 岡田 英之

組織人事コンサルティング部長

岡田 英之

早稲田大学卒
東京都立大学大学院  社会科学研究科  経営学専攻  経営学修士(MBA)
国家資格  キャリアコンサルティング技能士
産業カウンセラー