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2020年8月24日

リモートワークの本質

 近年、官公庁や企業において、特に人事関係者間で呪文のように唱えられた言葉が「働き方改革」です。関連する法規制の背景には、働く人々が、それぞれの事情に応じた多様で柔軟な働き方を自ら選択できるようにしなければ、少子高齢化が進む日本社会ではいずれ立ち行かなくなるという危機感があります。しかし、当時、行政の積極的なキャンペーンも虚しく、「働き方改革」は遅々として進みませんでした。理由は、働く人々が、「働き方改革」というものにさほど切迫感を持っていなかったことです。
 ところが、新型コロナウイルスの流行を契機に、あれだけ進まなかった改革が一気に進みました。その代表格がWeb会議システムです。緊急事態宣言が発令される中で、手探りでリモートワークを始めた私たちが最初にしたことは、自宅のインターネット回線を整備し、Zoom、マイクロソフトチームス、グーグルミートなどのWeb会議システムのアプリをダウンロードする行為でした。それまでは、遠隔地とのやり取りといっても、せいぜいSkypeで個人的なやり取りをする程度であった私たちが、PCやスマホを前に、慣れない打ち合わせや会議に参加し、同僚と情報を共有するという新たな一歩を踏み出しました。
 Web会議システムはツールに過ぎません。使っていれば自然と使い方が身についていきます。当初は、Web会議システムの操作に戸惑い、苦労した私たちも、ツールを何度か使用しているうちに使い方に慣れていきました。
 しかし、まもなく、私たちはWeb会議システムのほんとうの困難に直面するようになります。それは、Web会議システムを使用した会議にコミュニケーション実感が湧かず、ある意味遠い世界で起きていることのような感覚に陥ってしまう現実です。背後には、バーチャル空間でのコミュニケーションの難しさという課題が存在します。Web会議を通じてのコミュニケーションをどのように行えばよいのか、いまだに試行錯誤が続いている状況かと思います。
 Web会議システムを利用して「生きたコミュニケーション」を成立させるには何をすればよいのか?その方法がわかればリモートワークの環境はより快適になるハズです。
 この難しい課題を解くには、リモートワーク環境か否かに関わらず、そもそも仕事とは何か、仕事を巡るコミュニケーションとは何かについて、しっかり定義しておかなければなりません。仕事の定義とは、「組織で決定したした目標に向かって協力して作業(協働)し、成果を出す営み」であると定義します。著名な経営学者であるバーナードが唱えた「協働体系」の概念です。Web会議システムを通じての生きたコミュニケーションを成立させるためには、「協働体系」を構築するプロセスを上手に取り込むことだったのです。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)