2020年10月28日
COVID-19、いわゆるコロナウイルスにより私たちの働き方や生活に変化が生じ、6ヶ月程度が経過します。テレワーク、在宅勤務、時差出勤、サテライトオフィス、DX(デジタルトランスフォーメーション)等々人事や働き方に関する多くのBuzz(バズ)ワードを耳にするようになりました。皆さんの企業(組織)ではいかがでしょうか? 当初は戸惑い、困惑していた新しい働き方に対しても、時間の経過につれて組織や個人が順応しているのではないでしょうか。 コロナのようなパンデミックが発生しようと、社会的隔離やソーシャルディスタンスの維持をしていようと、私たちが生活していく上で特に大きな支障はないことも体感しました。マスクをつけなければならず、人と親しく付き合えないということさえ除けば、オンラインショッピングで何でも購入でき、在宅勤務やテレワークをしながら出勤しなくても働くことができます。Web会議やオンライン講義(ウェビナー)も活用します。銀行に行かなくても、モバイルバンキングで必要な銀行業務を済まし、株式投資や企業融資も非対面で行うことができます。映画館に出向かなくても、ネットフリックスで好きなだけ映画も鑑賞でき、運動もホームトレーニングで自宅にいながら一人でできます。人と直接会う対面や接触をしなくても、必要なことは十分にできて、不自由なく生活できてしまう。こうした社会をアンコンタクト社会と称するようです。 私たちは、アンコンタクト社会の到来を突如訪れた変化ではないこととして認識する必要があります。かなり以前から変化の予兆は起きており、今日現在私たちの日常にも深く浸透しています。上記の通り、オンラインショッピングやモバイルバンキングなどはその典型例です。今回のCOVID-19でアンコンタクト社会のスピードが加速しただけの話なのです。 産業や経済、社会において、アンコンタクト(非接触)は進むべき未来の方向だとすると、人事マネジメントはどう変化すべきでしょうか。 これまで人事の世界では、採用、人材育成、評価、労務管理など様々な場面で人間と人間が直接触れ合い、コミュニケーションすることで課題や問題に対処してきました。制度や仕組み(ルール)というハード面ではなく、人間の心の機微に着目する心理的・感情的側面(ソフト面)を重視してきた傾向があります。 昨今では、HRテック(HRテクノロジー)という言葉に象徴されるように、経験と勘の人事から脱却し、客観的根拠(エビデンス)に基づいた意思決定が求められる時代に変化しつつあります。勿論、心の機微を理解することも重要です。 これからの人事マネジメントを考える際、はじめて経験する人間と人間との接触、非接触という問題。接触することで得られた効用を非接触によりどこまで担保できるのか?非接触により得られる新たな効用とは何なのか?人間と人間の直接的な接触は、「当然」から「選択」の時代へ。 これからの人事担当者は、「アンコンタクト(非接触)」というキーワードも念頭に置きながら自社にとって最適な人事マネジメントを模索していかなければなりません。 人事部や人事関連部門は、本能的に変化を恐れる組織だと揶揄されることがあります。慣れ親しんだ制度や慣習を運用することに安住したくなる気持ちも理解できます。変化とは、手をつけていなかったことに手をつけなければならなくなることであり、知らなかったことを新しく学ばなければならなくなることです。「アンコンタクト(非接触)」という社会の変化に逆らう(抵抗する)ことは決して賢い選択ではありません。百歩譲って、これまでは変化のスピードが遅かったため、変化しなくてもある程度企業組織を存続させることができました。現在は、変化スピードがあまりにも速くなっています。変化を拒否すれば次第に淘汰され、疎外されてしまいます。 みなさまの企業(組織)の人事諸制度(施策)を「アンコンタクト(非接触)」という観点から再定義し、変化の方向と正体を見極め、自社に最適な人事マネジメントを構築、実現してみましょう。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長
1996年早稲田大学卒 2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉 1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。 その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。 現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長 ■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員 ■2級キャリアコンサルティング技能士 ■産業カウンセラー ■大学キャリアコンサルタント ■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)