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2020年12月8日

リベラルアーツや哲学の視点から雇用・労働社会を振り返る

 コロナ禍というパンデミックにより世界中が不安と混乱に晒されています。いつまで続くのか先行き不透明なコロナの影響。当初の想定より長期化するのではないかという見方も多くなってきました。オリンピックは無事開催できるのか?ワクチンはいつ頃供給されるのか?医療崩壊は阻止できるのか?不安と混乱の種は尽きません。
 私たちの生活の基盤を支える雇用や労働分野においても、リモートワークや在宅勤務、DX(デジタルトランスフォーメーション)などといった働き方改革に本腰をいれる企業が増加し、コロナ禍をポジティブに捉え、新しい時代のワークスタイルについて、ゼロベースで考え直す機運が社会的にも高まっています。
 ところで、皆さんは自分らしいワークスタイルを取り入れられていますか?コロナ禍での働き方改革(新しいワークスタイル)は、国や自治体、企業といった組織が決めることではなく、働く私たちひとり一人が組織と個人との関係を見直し、自分らしいワークスタイルを模索することが大切なのかも知れません。
 では、ワークスタイルって何でしょう?そもそも私たちは何を目的に働いているのでしょう?労働という言葉を哲学的に紐解くと、古代ギリシャ時代は、労働は卑しく、呪いに満ちたものと見なしていました。自由な市民は労働しないことを徳と考えていたようです。市民は大土地所有者のように、働かなくても生活できる人であり、古代の制度はそれを前提としていました。労働をするのは奴隷だけであり、農業、手工業などの担い手はこうした奴隷たちでありました。市民対奴隷の身分社会です。現代からは想像もできない労働観です。その後産業革命の時代には、多くの人間は、工場やオフィスで労働者として働く機会が増加しました。労働者をどのように雇用し、どのようなルールで賃金を払えばよいか。工場内の産業用機械との関係をどうすればよいか、といった問題が経済学をベースに考えられるようになりました。同時に資本主義が発展し、どのような経済のあり方や体制が望ましいかということも議論されるようになりました。その代表が、アダム・スミスによる国富論です。この時代になると現在の私たちの働き方にも近い部分が散見されます。
 コロナ禍で将来不安が高まり、社会の変化も加速しています。フェイクニュースやエゴイズムが蔓延し、他人に無関心で自己中心の社会に変化しつつある中で、一度歩みを止め、時間をかけてしっかり立ち止まって考えてみることも必要です。リベラルアーツや哲学といった分野を足掛かりに皆さんが深く雇用・労働社会を考えるキッカケを得て頂ければ幸いです。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)