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2020年12月18日

パンデミック時代の危機対応と安心

 コロナというパンデミックに直面し、社会経済の動揺が高まっています。危機対応に奔走する行政や企業の動向が報道される度に、私たちは心が揺さぶられ、不安感、緊張感、不信感、不透明感などといった何とも表現しがたい感情に支配されます。今後、私たちの働く職場はどうなってしまうのか?働き方はどこまで変化するのだろうか?日常生活は?家族や仲間との関係は?考えてもスグに答えが見つからないことはわかっていながらも自然と心が反応してしまう日々ではないでしょうか。
 私たちは、リスク(危機)に直面した際、何を考え、どう行動するのでしょう。多くの場合、リスクを回避するか、リスクの最小化を考え、行動します。しかし、こうした考え方や行動は、常に正しく、私たちを幸福にし、未来の希望へとつながるのでしょうか。危機(リスク)の種類によっては、ムリに対応しない方が良い場合もあるのではないでしょうか。例えば、私たちが現在直面しているパンデミックリスクに対しては、これまでの日常に早く戻りたいという一時の「安心感」を得るために、ウイルスという見えない恐怖に立ち向かっているのかも知れません。この一時の「安心感」は、変化の激しい世界においては、砂上の楼閣に過ぎないのかも知れません。そもそも恒久的な安心など存在するのでしょうか。
 私たちがパンデミック時代に考えるべき安心とは何でしょう。文化人類学者のレヴィ=ストロースが唱えたプリコラージュいう言葉からヒントを得ることができます。プリコラージュとは、最悪の状況においても、今そこにあるリソースで何とかやりくりし、そこそこのクオリティの成果を出すこと。対置される言葉として、エンジニアリングという言葉があります。エンジニアリングとは、目標や計画を綿密に立て、プロセス(手順)を厳格に管理すること。パンデミック時代は、不確実で視界不良の時代です。最新の数理統計学を駆使し、ビックデータを解析しても所詮確率論の話で終わってしまいます。
 パンデミック時代の安心とは、誰も答えを持たない代物なのかも知れません。では、どうすれば良いのでしょうか。思考停止に陥ることだけは避けたいものです。未来に向かって前向きに、希望を抱いて前進したいものです。プリコラージュという言葉をヒントに、自分なりの安心を主体的に紡ぎだしていくことが必要なのかも知れません。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)