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2021年1月6日

脱メンバーシップ型雇用時代のコミュニティ

 企業がこれまでのメンバーシップ型雇用(旧き良き日本的雇用慣行)から脱却していくことによって、50歳代以上の人間にとって当たり前であった会社中心のコミュニティは今後存在感を薄めていくでしょう。また家族の在り方も変化しつつあります。大家族から核家族に変化してきた日本の多くの家族の在り方は、それでも同じ配偶者との関係を継続する傾向が一般的でした。しかし、すでに離婚率は30%を超え、欧米のように50%超まで上昇する可能性があります。また婚姻率そのものも低下しており、生涯未婚率は、男性で20%以上、女性でも15%以上に至っています。
 高度経済成長期の日本では、夫婦と子供2人世帯を標準としていましたが、これからの標準世帯は、個人+それぞれのつながり(選択型コミュニティ)になっていくでしょう。個人的な考え方や趣味嗜好を前提とした生活スタイルが当たり前の世の中になっていくのかも知れません。SNS利用者の拡大は、将に強制ではなく、コミュニティを主体的に選択できるからなのでしょう。
 核家族でメンバーシップ型雇用(旧き良き日本的雇用慣行)が当然だった時代、私たちは特に意識しなくても何らかのコミュニティに属していました。それは家庭と会社です。さらに追加するなら学校における友人や同窓会などのコミュニティも成立していました。これらは敢えて選択しなくても参画せざるをえなかったコミュニティであり、ある程度の束縛感を感じながらも安心感を得られる場でもありました。
 しかし、社会の変化は、コミュニティを選択型に変えつつあります。都市化の進展は家族と同居しない選択肢を提供します。大学卒業と同時に実家を離れ、家族と別居したままで過ごすことは当たり前になりました。昨今のコロナ禍においては、一部こうした動きに変化が見られますが、大勢は変わらないでしょう。
 かつては、骨をうずめる覚悟で入社すべきといわれた新卒入社の会社でも、転職による入社という門戸が開放されるようになりました。ビジネスパーソンの30%以上が転職経験を持つ時代です。コロナ禍においてテレワークが拡大した企業では、企業内コミュニティの成立要件は、一層選択型の度合いを高めていくでしょう。
 こうした環境変化に対し、組織と人の関係はどう変化していくのでしょうか?企業で組織と人の課題に挑む人事部門やマネジメントにとって、脱メンバーシップ型雇用時代の社内コミュニティの再構築が大きな課題となりつつあります。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)