2021年6月10日
キャリア自律という言葉が一般的になりつつある中で、「転職するために、自分の市場価値を高めましょう!」という類の言説をよく耳にすることがあるかと思います。人材ビジネス業界では、手をかえ、品をかえ、転職のためのセミナー、転職を煽るイベントなどで繰り返し使用する言葉が市場価値です。 そもそも市場価値の中身とは何でしょうか?仮に市場価値という代物の存在が確認できたとして、本当に自分のキャリア自律に繋がる転職(自己実現)が可能なのでしょうか? 本当に「転職という目的」を達成するために、「自分の市場価値」という「フワフワしたファジーな指標」を、多くの人はは高めようとしているのでしょうか? 現実には、市場価値が高い人とは、決して「転職の目的」ために、自分の市場価値を高める努力をした人ではない気がします。市場価値が高い人の特徴とは、 『 やるべきことを一生懸命こなすなかで、やりたいことを仕事にできるチャンスに出会い、それがたまたま世の中の流れと「同期(マッチ)」した人』なのではないでしょうか? 当然ですが、世の中は「不条理」で「気まぐれ」です。頑張った成果が「世の中の時流に乗れるか、そうでないか」は市場価値とは別の話です。市場価値の高い人とは、「自分のがんばり」に対して、たまたまスポットライトがあたる同時代を生きていたということでしょう。 巷で言われている市場価値とは、ひょんなことから生まれたチャンスをものにして、結果として、偶然生まれた何かを「市場価値」と言っているに過ぎないのではないでしょうか。 逆に、「市場価値の高い人」が、仕事に奮闘しているときに「絶対に」考えなかったこととは何でしょうか? 市場価値の高い人が、「絶対に考えなかったこと」とは、「自分の市場価値はいくらで、それを転職のために、どのように高めることができるだろうか」という内容のことです。 市場価値の高い人は、ただ愚直に現実と向き合い、やるべきことを行い、やりたいことをするチャンスをつかみ、がむしゃらに頑張っただけ。それが、結果として、市場価値という巷で言う代物に繋がっただけなのかも知れません。 皆さんに問います。「市場価値」の本質とは何でしょうか?
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長
1996年早稲田大学卒 2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉 1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。 その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。 現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長 ■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員 ■2級キャリアコンサルティング技能士 ■産業カウンセラー ■大学キャリアコンサルタント ■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)