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2021年6月17日

人事管理の根源的問いかけ

 人事管理の世界では、「企業にとって同じ価値を有する社員には同じ賃金を払う」ことが賃金決定の基本原則とされてきました。この原則からすると同一労働同一賃金は当たり前のことであり、ここにきて、その必要性をわざわざ声高に議論する必要はないということになります。人事管理にとっての課題はその先にあり、どの国においても長い歴史の中で同一労働同一賃金を実現するための具体的な解を求めて苦労を重ねてきました。
 例えば、同期入社で製品開発に従事するエンジニアのAさんと営業部門のBさんに同額の賃金を支払っている会社があるとしましょう。ある時、Aさんから「なぜ私はBさんと賃金が同じなのですか?納得がいきません。」と質問されました。会社はどう答えるべきなのでしょう?賃金が社員の会社にとっての価値の金銭的表現であると考えると、この例でのポイントは、AさんとBさんは製品開発と営業ということなる活動を通じて、異なる形で会社に貢献している実態があるにも関わらず、会社はAさんとBさんは同じ価値であると評価していることになります。つまり、会社は、会社に対する貢献の仕方が異なるAさんとBさんを、何らかの共通尺度で貢献を測定した上で会社にとって同じ価値の社員であるとしているのです。
 果たして本当にそうなのでしょうか?Aさんから会社に対する問いかけは、会社に社員の価値を測定する共通尺度について合理的に説明することを求めた質問だったのです。こうした社員からの問いかけに正しく答えることができれば、つまり「わが社にとっての最善の価値の決定方法はコレである!」と答えることができれば、人事管理の基本骨格を構築することも、賃金の決定方式を決めることもそれほど難しいこのではないのかも知れません。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)