2021年8月12日
世の中には「〇〇理論」と称される代物が多く存在します。私たちの職場(ビジネスシーン)でも理論に基づいた戦略や戦術、理論と実践のバランスなどが重視されます。 しかし、ちょっと考えてみてください。そもそも「理論」って何ですか?仮に上司や部下から「理論」とは何ですか?と聞かれたらあなたはどのように「説明」しますか?わかっているようで、わかっていないものに「理論とは何か」ということがあります。「理論」という言葉。実はわかっているようでわかっていないかも知れません。 キャリアカウンセリングの世界で著名な國分康孝さんの著作に「カウンセリングの理論」があります。この本は、國分さんが、折衷主義の立場から古今東西のカウンセリング理論を解説している名著ですが、「理論についての説明」が書かれている部分があります。その中に「理論がなぜ必要か」についての説明があります。以下、この著書の内容に加筆をしつつ、理論とは何かについて説明しようと思います。 ---ここから引用--- わたしたちの世界には、まず「現象」というものがあります。 現象の背後には「日頃は隠されている事実」というものがあります。 研究者は、「分析」という手段を用いて、「現象」の背後に「事実」を発見します。 ---ここまで引用--- 例えば、「離職」というものが「現象」だとします。 もし、この「離職」という現象が、「年齢別」によって異なる傾向を示しているならば、これが「事実」です。離職という「目に見える現象の背後」に、「目に見えない傾向がある」。これが「事実」です。 ところで「事実」の中には、一定程度、「共通する原理・原則」というものが出てくる場合があります。そこで生まれるのが「概念」です。 例えば、先程の流れを引き継ぐのであれば、昨今、話題になっている「介護離職」というものは「概念」です。親の介護という突発的事態によって、50代の働き盛りの社員を離職に導いてしまう傾向のある「事実」が、一定程度、世間一般に見受けられるので、これを「介護離職」と名付けることが可能となります。 そして、こうした「概念」が、ある程度集まって形成される(ゲシュタルト)されるのが「理論」です。 理論とは、概念が集まって、「世の理(ことわり)を説明するストーリー」のようなものと考えられます。先程の「介護離職」を含みうる、「現代のビジネスパーソンの離職一般」を説明する理論がもしできたのとしたら、それがたとえば「離職〇〇理論」と呼ばれるようになります。 このようにしてわたしたちは「理論」を手にします。 理論が素晴らしいのは、効用を有するからです。 理論の効用とは、下記の4点において説明できます。 ①結果を予測することができる ②ある「事実」を説明・解釈する手がかりを得ることができる ③ある現象を「整理」することができる ④仮説を生み出す「母体」になることができる こうした効用によって、私たちは「無駄な体験」や「無理な試行錯誤」を回避することができます。 体験主義、経験主義を標榜し、「這い回る経験主義」や「試行錯誤地獄」に陥ってしまうくらいなら、片手に「理論」を持参した方が有効な武器になるのではないかと思います。 皆さんの職場でも予測のつかない出来事に戸惑っていたり、目の前に解釈不能な「事実」が横たわっていたり、現象が混乱し、訳の分からない状況に陥っていたら、是非、片手に「理論」を持参してみてください。もし、皆さんが現象や事実を目の前に「整理」することを望んでいるのでしたら、是非、「理論」を紐解いてみてください。 理論は「とてつもない成功」を保証しませんが、「整理」することができます。 そして「経験する必要のない無駄な失敗」を出来る限り回避することができると思います。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長
1996年早稲田大学卒 2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉 1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。 その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。 現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長 ■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員 ■2級キャリアコンサルティング技能士 ■産業カウンセラー ■大学キャリアコンサルタント ■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)