2022年4月27日
一般的な認識として、組織における「強いリーダーシップ」の発揮は組織を活性化させることがあるかと思います。これまでのリーダーシップに関する研究知見や実践場面においても、強いリーダーシップの発揮がメンバーに対して有効に機能することは実証されています。 リーダシップには様々な種類(形態)があることは自明の理ですが、中でも特に有効なものとされるのが、変革型リーダーシップです。変革型リーダーシップとは、以下の4側面を兼ね備えたリーダーシップを指します。 ■個別配慮:メンバーのニーズに気を配り、考えに耳を傾ける ■知的刺激:リーダーが挑戦する姿勢を見せ、メンバーの挑戦や創造を刺激する ■鼓舞:メンバーにビジョンを示し、目の前のタスクに意義を見出させる ■カリスマ性:メンバーから尊敬や信頼を集める魅力を発揮する メンバーの個性を尊重し、上司と共に前進していくことでメンバーの能動的な努力を高めることが、変革型リーダーシップの理想といえます。このようなリーダーシップを上司が発揮することは、メンバーのストレス抑制や職務パフォーマンス向上など、様々な良い影響があることが確認されています。 その一方で、あまりに「強すぎるリーダーシップ」がメンバーのパフォーマンスに悪影響を及ぼすことはないのでしょうか。リーダーシップ発揮の高まりは、常に一貫してメンバーに好影響を与えるのでしょうか?この点に関して、某研究機関では、二つの調査において様々な業種の企業8社から、計348組の上司-メンバーのペアデータを集めて検証が行われました。この検証によって示された結果は、次の2つです。 ■上司の変革型リーダーシップは、ある程度の高さに至るまではメンバーのパフォーマンスを高めるが、その程度を超えるとパフォーマンスが低下するような、曲線形の関連がある ■特に、メンバーが消極的な性格の場合、上司の変革型リーダーシップがそこまで高くない段階から、パフォーマンス低下が生じ始める 以上の結果から、「共に前進しメンバーの努力を引き出すリーダーシップは、高めれば高めるだけ良いというものではない」ということがわかります。メンバーの能動的な努力を引き出すリーダーシップが強すぎると、リーダーの影響性がメンバーにとってむしろ重荷になってしまい、パフォーマンス発揮を阻害してしまうのです。この調査結果を踏まえると、リーダーシップ育成の目標も再考する必要があるでしょう。「何事も程ほど(良い塩梅)が大切」は、リーダーシップ発揮にも通じる考え方なのかもしれません。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長
1996年早稲田大学卒 2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉 1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。 その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。 現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長 ■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員 ■2級キャリアコンサルティング技能士 ■産業カウンセラー ■大学キャリアコンサルタント ■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)