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2022年5月11日

人事評価制度の重要性を再認識しましょう

 2022年度より中小企業に対しても賃上げ関連の税制が拡充されました。優秀な人材のリテンションと社員のモチベーション向上を目的とし、この機会に賃上げや賃金(給与・報酬)制度の改定に着手したいと考える経営者は増えています。一方で、賃上げに関しては、業績向上が前提となるため、簡単には人件費を増やすことができない中小企業も多いことでしょう。
 中小企業の場合、賃金(給与・報酬)制度の導入手順や運用方法を間違うと、社員のモチベーションを低下させ、場合によっては生産性まで低下させてしまいます。実際に、ある企業で全社員の賞与がアップしたにも関わらず、ほとんどの社員が不満を持つ結果となったケースもあります。
 給与や賞与を決める基準の人事評価に納得感がないと、社員の不満につながり、モチベーションは低下してしまいます。これを回避するのには、評価制度の整備と適正に評価できるリーダー(管理者)の存在が不可欠になります。しかし、多くの中小企業ではこうした人材が育成されていません。
 そもそも中小企業と旧東証1部上場企業とは年収、生産性ともに2倍近い差があります。格差が生じる理由は様々ですが、特に注目したい点は、従業員100人未満の会社のほとんどは明確な経営計画と人事評価制度が存在しないという点です。存在してもうまく運用できていない会社が大半です。この点こそが中小企業で人を評価できるリーダーが育たない理由だと考えます。
 社員の理解と共感を得られる人事評価制度にするには、まず経営計画がなくては始まりません。経営理念やvisionを示し、各自がどのような人材に成長する必要があるのかを明確にした人材育成目標を経営計画に盛り込む。この目標をブレイクダウンした人事評価制度の運用を通じて、初めて成長目標に向けた指導と適正な評価を行うリーダーを育成できます。
 リーダーが育成されれば、いよいよ賃金(給与・報酬)制度の設計に着手できる環境が整います。改革を急ぐ場合は、人事評価制度の設計と運用とリーダー育成を同時に推進すべきです。経営計画や人事評価制度は会社の生産性を上げるうえでも必要不可欠です。社員のモチベーション向上や人材育成は賃金(給与・報酬)制度のみの改定では実現しないことを再確認しましょう。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)