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2022年12月1日

組織文化(カルチャー)の基本的理解

 組織に活力が溢れ、社員が活き活き働く職場環境を目指して、多くの経営者が日々努力されているかと思われます。社員のエンゲージメントを引き出し、組織のパーパスを言語化し、ビジョンを実現することが経営者の大きなミッションのひとつです。こうした内容は、組織文化(カルチャー)としてこれまでも数多く議論されています。
 はじめに組織文化(カルチャー)の定義を確認しておきましょう。エドガー・シャインによれば、組織文化(カルチャー)とは、『組織が外的適応と内的統合を実現するための、共有されたルール』と定義しています。外的適応とは、市場の中で生き残ること、内的統合とは社内での一体感です。企業が一丸となって環境変化に適応していくプロセスを通じて形成されるのが、組織文化といったところでしょうか。組織文化(カルチャー)の他によく耳にする言葉が組織風土です。組織風土とは、『知覚された組織文化(カルチャー)』であり、組織文化(カルチャー)の中でも特に表層的なものを意味します。組織文化(カルチャー)の方が概念としては大きく、その中に組織風土が含まれているイメージです。
 次に、皆さまの企業(組織)の組織文化(カルチャー)をどのように捉えたら良いのでしょう。Wallach, E. J. が唱えた考え方に、組織文化インデックスと呼ばれる枠組みがあります。可能な限り短い言葉で組織文化(カルチャー)の特徴を捉えようとし、官僚(ヒエラルキー)的文化、革新(イノベーティブ)的文化、支持(サポーティブ)的文化の3つに分類しています。
①官僚(ヒエラルキー)的文化
階層が重視され、部門化が進んでいます。責任と権限が明確であり、コントロールや権力に重きが置かれています。官僚(ヒエラルキー)的文化に近いほど、次の言葉が当てはまる傾向があります。
■階層的だ、手続き重視、構造的な、秩序立った
②革新(イノベーティブ)的文化
刺激的でダイナミックな組織文化です。職場は創造性にあふれており、挑戦やリスクテイクが盛んに行われています。革新(イノベーティブ)的文化に近いほど、次の言葉が当てはまります。
■リスクテーキング、創造的だ、刺激的だ、挑戦的だ
③支持(サポーティブ)的文化
温かい職場であり、人々が優しく、お互いに助け合っています。家族のような存在として支え合っています。次の言葉が当てはまると、支持(サポーティブ)的文化であると言えます。
■協力的だ、人間関係志向、社交的だ、信頼できる

皆さまの組織(職場)は、どれに近いでしょうか?

 一方で、組織文化(カルチャー)を変えることはそれほど容易ではありません。組織文化(カルチャーを変えようと、様々な施策を導入しても、いつしか逆戻りしてしまうことがよく起こります。
 企業(組織)によっては、組織文化(カルチャー)を手っ取り早く変えようと、組織図(構造)を頻繁に変更する場合があります。しかし、組織図(構造)は組織文化に影響を与えないことが多く、有効な方法であるとは言えません。
 新しいメンバーを迎え入れる(中途採用)ことで組織文化(カルチャー)を変えようと試みる企業(組織)も散見されます。ところが、組織文化(カルチャー)は、新しいメンバーが加入しても簡単に揺らぐものではないというデータが多いです。
 このように変化しにくい組織文化(カルチャー)を変えるにはどのような点を意識すれば良いのでしょうか?それは、「Ideal」と「Focus」という2つの単語です。
<Ideal>
 自社にとってどのような組織文化(カルチャー)が理想的かを考えてみましょう。例えば、経営理念を参考に考えたり、現場にヒアリングをして考えたりします。事業計画を実現するために必要な組織文化を考えるアプローチもあるでしょう。大切な点は、唯一最善の組織文化(カルチャー)は存在しない点です。各社で理想とする組織文化(カルチャー)を丁寧に検討しなければなりません。 
<Focus>
 次に、絞り込むことです。組織文化(カルチャー)を丸ごと入れ替えるのは至難の業です。しかし、文化の一部を変更するのであれば、実現可能性が高まります。例えば、現在の組織文化(カルチャー)は閉鎖的で、理想の組織文化(カルチャー)は開放的なのであれば、閉鎖的から開放的にすれば良いでしょう。このように範囲を絞って、組織文化(カルチャー)を変えることを検討します。

 組織文化(カルチャー)は、強ければよいというものではないでしょう。“強さ”より“しなやかさ”が必要です。VUCA時代で環境変化が大きい場合、強い組織文化には要注意です。組織文化は、ある程度変えられるゆとりを持ち、ほどほどの強さにとどめる必要があるでしょう。

上記を参考に、皆さんの企業(組織)の文化(カルチャー)について、対話(Dialogue)する機会を設けてみるのはいかがでしょうか。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)