2023年2月23日
昨今、「心理的安全性」という言葉が一般化しています。組織やチームの中で、自分の考えや思いを誰に気兼ねすることなく、安心して発言できる状態を意味します。エドモンドソンという研究者が1999年に提唱した心理学の用語です。心理的安全性が高い組織(チーム)では、メンバーのパフォーマンスが向上し、業績や成果につながったり、コミュニケーションが活発化したり、エンゲージメントが向上したりという良い効果が確認されています。心理的安全性を高める方法の一つとして、アサーティブコミュニケーションがあります。相手を尊重しながら対等に自分の要望や感情を伝えるコミュニケーション方法です。 さて、「心理的安全性」と似たような言葉で「心理的柔軟性」という言葉にも注目が集まっています。「心理的柔軟性」とは、現在、この瞬間への意識の集中、気づきを持ちつつ、自分が本当に大切にしたい価値に集中し、そのために必要な行動をとる能力のことだと説明されています。マインドフルネスの考え方から援用されたようです。心理的柔軟性が高まると、心の健康が増進され、ウェルビーイング向上にもつながるようです。 心理的柔軟性が高い人のイメージとして、「いつも安定感、安心感を人に与え、何かあったときに相談したいなあ」と感じさせる人が挙げられます。言動に派手さはなく、自己主張も控えめですが、実直に仕事を進め、周囲からの信頼も厚い人です。「自分にとって大切で必要なことを理解している」、「変えられないものは、無理に変えようとせず一旦受容する」、「状況を俯瞰視でき、メタ認知を身につけている」という特徴があるようです。 心理的柔軟性を高めるためには、次の6つのキーワードが提唱されています。①脱フュージョン、②拡張、③接続、④観察する自己、⑤価値、⑥目標に向かう行動 特に①脱フュージョンには注目が集まっています。フュージョンとは一体化を意味する言葉です。私たちは、毎日様々な思い(思い込み)をめぐらせます。役立つアイデアもあれば、思い込みや偏見もあります。それらの思い(思い込み)にがんじがらめに囚われてしまうと、時間やエネルギーを消耗し、ストレスを抱えてしまいます。現実をありのままに捉えつつ、自分の思考(思い込み)と一旦距離を取ることが必要です。思考(思い込み)と適度な距離感を保つことができるようになると、冷静に判断しやすくなり、心理的柔軟性が高まっていきます。自分の思い(思い込み)に固着せず、脱ぎ捨て、客観視するようなイメージ(感覚)です。①脱フュージョンが実践できるようになるには、一定のメンタルトレーニングが必要とも言われていますが、先が見えない混迷の時代には、実現したい感覚ではないでしょうか。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長
1996年早稲田大学卒 2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉 1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。 その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。 現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長 ■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員 ■2級キャリアコンサルティング技能士 ■産業カウンセラー ■大学キャリアコンサルタント ■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)