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2023年4月7日

ジョブ型雇用に見る「日本型職務給」への模索

 昨今、所謂「ジョブ型雇用」に関する議論が喧しいです。専門家のみならず一般のビジネスパーソンの間でもその是非や実現可能性について活発な議論が交わされています。一方で、誤解や勘違いも多いのが実態です。議論の大半は、欧米型の厳格な職務給制度やジョブ型雇用に急激に移行することは現実的ではなく、段階的に変化させていくという内容です。私からは、働くビジネスパーソンの成長を促進する余地を残した職務給制度を日本型として位置づけるべきだと考えます。
 職務給制度は、戦後にGHQ関連の労働諮問団が提唱したことを契機に、石油ショックなどの不況期に何度か国内で議論されました。その際、終身雇用、年功序列という日本型雇用の制度疲労が指摘され、改革の必要性が叫ばれました。しかし、その後の経済回復に伴い、議論はいつの間にか消沈してしまいました。
 現在、極度の少子高齢化による高年齢人材の比率拡大、イノベーションやグローバル化による労働対価(賃金水準)の適正化圧力など、待ったなしの改革が余儀なくされています。成果・業績・スキルと報酬の時間的GAPを長期雇用で精算するラジアーモデル(日本的賃金体系)は、多くの企業で持続不可能になっています。結果、失われた〇〇年などと揶揄されたりもしています。それでも、職務給制度が長期間日本で拒否感や違和感を持たれ続けてきた背景には何があるのでしょうか。そのヒントは、「仕事への考え方」の特徴にあるようです。
 欧米型職務給制度は、組織をメカニズムとして考え、各ポジションと労働者がパーツのように位置づけられているように見えます。各パーツには、仕様(ジョブディスクリプションという職務記述書)が詳細に規定され、それにマッチする人材を当て嵌めるという発想です。事業環境変化に応じて、ある意味機械的(プラグマティック)に交換します。一方日本では、組織は、生命組織のような有機体で構成されているというイメージで捉えます。仕事を通じて、熟練度が増し、仲間意識が醸成され、人間関係(ソーシャルキャピタル)が構築されます。将来に向け、同一組織の中で少しずつ大きな役割を担っていくことが期待されます。「パーツ」ではなく、「成長する細胞」という見方です。細胞分裂を促し、生命体として健全に成長していく上で職務給的考えが必要な部分もあります。この点を模索してくことが、これからの企業人事担当者の重要な役割のひとつかも知れません。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)