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2023年7月28日

再確認する組織マネジメントの基本

 組織マネジメントについては、これまで数多くの研究知見や実践経験が蓄積されています。令和時代の組織においては、多様性、柔軟性、VUCA、DX、AIなど、これまでとは異なる発想や手法が求めれる場面も多くなっております。皆様の企業においても、円滑に組織をマネジメントしていくために、基本的なポイントを確認しておくことが大切です。

1.組織マネジメントとは
 組織マネジメントとは、組織をスムーズに運営するためのマネジメント手法です。組織における4つの経営資源、「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「情報」を管理し、効果的に機能させていくことが組織マネジメントの基本的機能です。

2.組織マネジメントの目的
 組織マネジメントの目的は、上記の通り、経営資源を効果的・効率的に配分し、目標達成に導くことにあります。経営資源の中でも、特に「ヒト」に着目した管理を目的とすることが組織マネジメントの特徴です。経営資源としての「ヒト」は、「モノ」や「カネ」とは違い、モチベーション(感情・思い)やコンディション(心身の好不調)といった数字では計測しにくい要素に影響されやすく、ハンドリングが難しいと言われております。一方で、組織を動かしていくには、重要な資源でもあります。それだけに、組織マネジメントは企業の存在価値(理念、Value)や将来性を決定づける最重要事項といっても過言ではありません。

3.マネジメントとリーダーシップの違い
 組織の管理を行うという側面が共通しているため、マネジメントはリーダーシップと混同されることが多いです。リーダーシップは、あくまでもマネジメントの一部を示した能力であるため、両者は峻別して考える必要があります。リーダーシップとは、メンバーを目標やビジョンの達成に導いていくスキルを意味します。明確な目標に向かって、メンバーを牽引していく役割が求められるため、プロセスより結果が重視される場面も多い傾向にあります。対して、マネジメントは、組織目標を達成するための戦略や仕組みを考え、計画を実行・管理することを意味します。メンバー各人の能力・スキルを最大限に発揮させるような役割が求められており、結果以上にプロセスを重視するイメージです。

4.令和時代の組織マネジメント
 先行きが不透明な令和時代のビジネス環境においては、従来型の組織マネジメントではどうしても変化に対応することが難しいです。上位役職者の判断を待つ間(意思決定に時間がかかる)に周囲の環境が変化してしまうこともあり、企業間競争に負けてしまうリスクが高くなるのです。また、従来と比較して、テクノロジーの進歩が激しく、管理職の経験や知識が通用しない場面も増えています。こうした状況下にあって、リーダーの役割は大きく変化してきました。
 令和時代の組織マネジメントにおいて、管理職はチームメンバーの力を引き出すことを主な役割としつつ、自ら進むべきビジョンを示す存在となる必要があります。多様な価値観・能力を持ったメンバーとビジョンを協議し、「協働」と「創発」によって組織をまとめていくのが、理想的な管理職と言われています。そのためには対話(Dialogue)が重要になります。役職やポジションに拘らず、自由な発想で意見を出せるような雰囲気づくりが必要となります。

5.令和時代の組織マネジメントに必要な4つのポイント

①ビジョンと目的を明確にする
 令和時代の組織マネジメントにおいては、組織としての共通のビジョンを明確に言語化しておくことが大切です。どのような組織やチームを作っていきたいか、そしてどんな目標を達成したいのかといった視点から組織マネジメントは始まっていきます。また、組織として明確なビジョンを打ち出すには、管理を行う側(マネジメント層)が、自分自身のビジョンやミッションを持っておく必要もあると考えます。組織の管理を行う側として何が期待されているのか、世の中に対してどのような貢献ができるのかについて、あらためて整理してみましょう。

②心理的安全性の確保に努める
 コミュニケーションが活発で風通しのよい組織作りを行うには、メンバー間の信頼関係と心理的安全性(psychological safety)の確保が必要です。心理的安全性とは、組織の中において自分の考えや思いを誰に対しても、安心して発言できる状態を意味します。心理的安全性が高い組織であれば、質問や提案をしても受け止めてもらえると信じられるため、活発なアイデアが飛び交う状況を生み出せます。メンバー間の交流が活性化することで信頼が生まれ、より強固な組織へと生まれ変わるでしょう。また、リーダーシップを発揮していくためには、信頼関係が土台にあることが前提でもあります。組織として相互信頼に基づいた関係を築けていなければ、本来の能力を発揮できずに組織としての目標を達成するのが困難になることもあるでしょう。普段から積極的な対話(Dialogue)を行った上で、定期的なミーティングや1on1ミーティングなどを通じて、お互いの理解を深めていくことが重要です。

③メンバー間の対話(Dialogue)の仕組みを整える
 メンバー各人の目標(個人目標)と組織としての目標(組織目標)が同じベクトルであることで、組織としての力が最大化されます。組織の目標実現に向けた取り組みを強力に推進していくには、効率的な対話(Dialogue)でチームとしてのビジョンやミッションを共有していくことが大切です。

④影響力(権限パワー)の行使は慎重に検討する
 令和時代のマネジメントを実行する際に、必要に応じて従来型のマネジメント(階層(ヒエラルキー)型マネジメント)を行使することが望ましい場面もあります。しかし、組織に与える影響力を熟慮した上で行使しなければ、結果として、組織の調和を乱すことにもつながりかねないので注意が必要です。管理職としての影響力(権限パワー)を行使する際は、各メンバーにどのような心理が働いているかを慎重に見極めましょう。相互信頼や心理的安全性を十分に考慮し、時間をかけて取り組んでいく姿勢を見せることも必要かも知れません。仮に、正しい方向に組織を引っ張っていこうとしても、あまりに急進的な変革はメンバーに不安感をもたらしてしまいます。組織としてのミッションやビジョンを明確にした上で、具体的な計画を策定し、それを材料にメンバーと繰り返し対話(Dialogue)を重ねることがポイントです。

 組織マネジメントはビジネス環境の変化とともに、適切な手法を模索し続ける姿勢が大切です。効果的に組織の力を発揮していくためには、メンバーとの信頼関係を土台とした組織作りが必須であることを再度確認しておきましょう。

 皆さまの組織に所属するメンバーの自律的な行動を促すために、組織の理想像について定期的にチェック(インタビューやアンケート(サーベイ)調査など)する機会を検討してみてはいかがでしょうか。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)