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2023年9月11日

人事制度、自社で構築、整備できることが基本

 担当職務内容に応じて給与が決まる職務給や業務内容を明確に明記するジョブディスクリプション。所謂、ジョブ型雇用への関心が高まっています。多くの企業でその是非について議論がなされてきました。一方で、誤解や理解が不十分なケースも散見されます。例えば、「ジョブ型雇用を採用すると、解雇しやすくなる」とか「ジョブ型雇用を採用すると、配置や異動が極端に制限される」といった誤解や勘違いはしばしば耳にします。
 企業は、ジョブ型雇用の採用で、「人件費が適正化される」、「採用やリテンションマネジメントに効果がある」、「キャリア自律が促進される」などの期待を抱きます。従業員は、職種や担当業務が少しでも変わると、処遇が変化するという誤ったイメージを持つ人も多いようです。
 そもそも多くの日本企業では、正社員を総合職として採用している企業が大半です。総合職に対して、職務給やジョブ型雇用を採用する目的(ねらい)は何なのでしょうか。既に職務給を採用している企業に実態を聞いてみると、3タイプに整理できます。①グローバル市場への適合を強く意識している企業②マネジメント階層を中心に、これまでの職能資格等級制度からの脱却を目指す企業③役割等級やハイブリッド型を採用し、柔軟な組織に変えていこうという企業です。各タイプは、「あるべき理想」が異なっていて、併存・並列的です。いずれのタイプもマネジメント階層については、比較的明確に整理されていますが、専門職については曖昧になりがちです。一般スタッフクラスについては、職務給といっても、純粋に職種軸で採用、育成しているケースは少ないです。欧米企業とは、雇用慣行が異なるので、日本的のジョブ型を模索している最中です。
 程度の差はあるにせよ、多くの企業が課題を抱え、特に業務と給与との連動性をより高めていく方向に進んでいます。あらためて、巷の表層的な議論や不正確な情報に惑わされず、自社に合った人事制度を構築、整備できる能力、スキルを養っておくことが基本です。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)