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2023年12月15日

スキルシェアという新しい発想

 労働力人口減少が加速する中、各社人財採用に頭を悩ませています。アルムナイネットワークという言葉にも代表されるように、退職した元社員との交流組織を立ち上げる企業も増えています。一方で、多くの組織が課題として挙げている若手社員の育成とリテンション(離職抑止)。この課題に対して、アルムナイネットワーク人財をアサインするのも難しい現実があります。
 Z世代を中心に、これからの働き手に就社意識は減少していきます。自立する社員を応援し、退職後も関わり続ける環境作りが自社の利益に還元される時代です。
 社員の範囲が拡大しています。これまでは、会社と1対1で結びつく正社員が大半でしたが、働き方が多様化し、退職者やフリーランス、副業人財と接触する機会も増えているのではないでしょうか。優秀な社員を育て、自社だけで囲い込むやり方から他社とシェアする時代への転換です。
 某人財サービス企業の2021年度調査によると、フリーランス人口は1,577万人。5年前との比較で7割程度増加し、全労働力人口の20%に達しています。
 デジタル化等で産業構造が変化し、企業で必要となる知識やスキルは日々変化します。当然自社のみでは賄いきれず、社外の人財といかにコラボレーション(協働)できるかが競争力を左右します。そこで注目されているのがスキルシェアという発想です。具体的には、個人が自身のスキルやノウハウをオンラインで売買できるプラットフォームを指します。
 スキルシェア事業を行っている株式会社ココナラの顧客は約30,000社と言われています。市場は拡大傾向にあります。シェアリングエコノミー協会の試算では、2032年度の市場規模は2兆円を超えると推計されています。
 会社の指揮・命令中心に働くという伝統的な雇用前提は変化し、多様な働き手がスキルを磨いてプロ人財を目指す社会になると言われています。
 組織と働き手の力学(関係性)が変化している時代。多様な人財に活躍の場を提供できる企業のみが生き残るという発想に転換できるかがポイントになりそうです。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)