2024年2月14日
私たちはコロナ禍を経て、社会の様々な変化を目撃しました。企業においても、リモートワーク、オンライン会議、非接触でのコミュニケーションなど働き方の変化は勿論のこと、家族との関わりやプライベート行動にも大きな変化を経験したのではないかと思います。 コロナ以前では、平日は主に家庭と職場の2つの場所を往復し、貴重な余暇時間(特に過重労働やワーカホリックのビジネスパーソンにとって)で趣味や気の合う仲間との第3の居場所を持つという方も多かったのではないでしょうか。「家庭の自分」、「職場の自分」、「もう一人の自分」という具合に、謂わばアイデンティティのポートフォリオを組むことで、人生を充実させることが多かったことでしょう。 コロナ禍で日本人は新しい生活様式としてソーシャルディスタンスを優先し、物理的移動や人流を抑制し、オンラインを駆使しながらパンデミックを乗り越えてきました。ここで考えみたいのが、自分の「居場所」にどのような変化が生じたのかという観点です。 「居場所」の意味は様々ですが、ここでは「人間が世間や社会の中で落ち着くべき場所。安心(心理的安全性)が確保されている場所。」としましょう。某調査機関が2021年に実施した居場所についての意識調査結果では、10代から60代の約90%が「必要」だと考えています。更に、持っている「居場所」の数では、平均2.64か所となり、家庭、職場、第3の居場所の3か所を下回る結果となりました。家庭と職場以外の居場所が確保できていない環境が伺えます。 第2の居場所である職場は、「滞在時間こそ長いが、自分の居場所だと思われていない」ことが調査結果から見出されました。職場は、様々なストレスや不満を抱えた人たちが、長時間滞留し、決して生産性の高くない環境で、居心地の悪さを感じつづける場所だと認識されています。コロナ禍を経て、出社を促したい経営層とリモートワークを継続したい社員との間に軋轢が生じることも必然かも知れません。こうした状況から少しでも早く脱却しましょう。 組織の生産性、組織・仕事へのコミットメントを考える前に、社員が集まりたくなる職場(居場所)には何が必要でしょう。「ひとり(一人称)」、「みんな(多人称)」ではなく、「私とあなた(二人称)」の関係になれる空間ではないでしょうか。業務に集中できる個人ワークスペースや開かれたスペースの確保も必要ですが、自然と二人称の対話(Dialogue)が生まれる空間や体験をデザインしてみる。こんな視点を持って、皆さんの職場の空間や社員の様子を眺め、捉えなおしてみることで、「居場所」として職場の魅力を再構築できるのかも知れません。皆さんの職場が、社会的「居場所」として機能するようになると、生産性や組織・仕事へのコミットメントも変化し、企業価値も向上していくことでしょう。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長
1996年早稲田大学卒 2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉 1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。 その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。 現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長 ■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員 ■2級キャリアコンサルティング技能士 ■産業カウンセラー ■大学キャリアコンサルタント ■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)