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2024年4月1日

巷で良く耳にする「経営者目線」とは?

 管理職(マネジメント層)を対象とした研修プログラムを構築したり、実際に講師を行ってみると、所謂「経営者目線」の重要性について議論する場面が多かったりします。「経営者目線=俯瞰的視野」と考えてもよいでしょう。「経営者目線」の定義が何たるかについては多事争論ありますが、「経営者目線」の不足が企業業績や組織マネジメントに与える影響は大きいようです。
 敢えてわかりやすく、「経営者目線=俯瞰的視野=全体観」と捉えると、最も身近には、売上と費用を勘案し、効果的に利益生み出す一連の活動について、できるだけ高度(多角的)な判断をするための視点(視座)ということでしょう。昨今、多くの社員は、専門性を磨き、スペシャリスト指向を強める傾向です。しかし、彼らの多くは、自身に課されたタスクの範囲内での専門性に終始し、所属企業・組織全体の活動を視野に入れた専門性を意識することは少ないようです。私も研修講師を行っている場面で、「営業部門の抱えている課題は理解しているつもりだったが、よくよく話を聞いてみると誤解していた・・・。」という声をよく耳にします。例えば、経営者目線に乏しいと、売上が伸びないタイミングで利益を増やす方法をコストダウンに偏りがちです。高利益体質に転換できるよう事業を組み立て直す発想ができません。
 さらに、経営者目線では事業全体に対する当事者意識も必要です。自分が所属する部門だけではなく、関係部門やグループ会社、取引先も含めた一連の事業活動を自分ごととして感じることが重要です。しかし、現実問題として、複雑に階層と機能で分業化された組織では全体の意思決定に関わる機会がほとんどなく、当事者意識を持とうとしても難しいのが実態です。これでは、事業再構築に向けた熱意と創造性は発揮されにくいでしょう。
 経営者目線でもうひとつ大切なポイントとして、「長期思考」があります。ビジョニングと言っても良いかもしれません。経営には5年、10年という中長期スパンが欠かせませんが、果たして1年以上先の目標を意識して仕事をしている社員がどれだけいるでしょうか。生真面目な社員であればあるほど、人事評価や社内での評判を気にし、短期的成果・業績を過剰に意識する傾向にあります。こうした意識が固定化すると、短期間での積み上げ型の思考回路(例えば、目先(今日や今月の売上)をいかに確保するか)に凝り固まってしまいます。経営者目線に必要な「目指すべき理想の姿を描き、いかに実現するかというビジョンから逆算する思考法」が育まれません。結果として、常に既存事業の改善や効率化ばかりが優先され、将来の利益となる新規事業の芽が生まれにくい組織風土になってしまいます。
 多くの企業・組織で既存事業の見直しと新規事業創出が求められています。しかし、イノベーションやDX、リスキリングといった流行の表層のみを取り入れ、自己満足(取り組んでいるつもり)に酔っている企業・組織を多く目にします。何年経っても実態は何も変わりません。それよりも、まずは、事業単位の小規模化や階層のフラット化、権限移譲、組織横断型チームの活用など、社員の経営者目線を育むキッカケとなるような組織にリ・デザインするという身近なことからはじめてみることが大切です。皆さまの所属企業・組織ではいかがでしょうか。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)