2024年4月17日
多くの組織は環境適応能力を有しています。一方で環境変化を見誤り不適応に陥ることもあります。著名な組織社会学者であるフィリップ・セルズニックは、今から50年以上前に組織の外部環境への適応とそれに伴う諸問題を指摘しています。 企業は活動する市場で顧客ニーズを取り入れ、必要なリソースをベースに製品やサービスを生み出します。このことで外部環境に適応していきます。環境を構成する各主体(市場・顧客・地域・法規制・市民など)と組織との間には常に利害関係が伴います。例えば、安定した雇用を求める従業員と大手企業、スタートアップ企業とそこに出資するベンチャーキャピタルなどです。組織が環境に適応するとは、何らかの価値観を身につけることでもあります。既述のセルズニックは、価値が伴う環境を「制度」と呼び、環境に適応することを「制度化」と言いました。制度化のプロセスは、組織が生き残るための独自能力を蓄積するプロセスとも言えます。例えば、顧客との信頼関係を構築し、長期的な取引による競争優位性を確保する。あるいは、系列やグループ化といった囲い込み戦略により、確保した市場から安定的に収益を確保する等です。 一方で、組織は一旦独自の価値観を身につけると、環境が変化した際に問題が発生します。例えば、デジタル化前後の家電業界の栄枯盛衰を観れば明らかでしょう。こうした場面で要求されることは組織を変える意思決定です。イノベーションと表現しても良いかも知れません。しかし、このような意思決定は極めて困難です。過去の関係における利害関係者との関わりがイノベーションを阻害します。自組織が蓄積してきた独自の価値観が邪魔をするというパラドクスです。このパラドクスを克服するには大胆な人心刷新が必要なのは勿論のこと、M&Aや戦略的業務提携、アライアンス等により、謂わば組織に外部圧力をかけることも一案かも知れません。現在、日本に存在する多くの中小零細企業はこれに類する問題に頭を抱えているようです。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長
1996年早稲田大学卒 2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉 1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。 その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。 現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長 ■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員 ■2級キャリアコンサルティング技能士 ■産業カウンセラー ■大学キャリアコンサルタント ■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)