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2024年5月15日

令和時代の人事評価フィードバック面談

 多くの企業(組織)で人事評価制度を導入しているかと思います。実際に評価やアセスメントを行い、数年運用してみて感じることは、「評価結果の本人へのフィードバックが難しい」ということに尽きるかと思います。管理者(評価者)に対する面談トレーニングや日常場面での1 on 1面接など、フィードバックを効果的に行うためのスキルトレーニングを行っている企業(組織)も多いことでしょう。昨今は、職場を構成するメンバーも多様化し、テレワーク、ワーケーションなど働き方も多様化しています。特にZ世代に対するコミュニケーションについては、巷での議論も喧しいかと思います。今回のコラムでは、ポジティブフィードバックにフォーカスし、効果的な「褒め方」のポイントをご紹介します。

①「褒める内容を意識する」:
 自己調整がキーワードです。自己調整とは何かと言いますと、人事評価の一連のプロセス(準備~業務遂行~業績・成果の判断と評価~来期の準備など)を計画的にコントロール(意識づけ)できているかということです。人事評価(特にMBO)では、各人が取り組んでいる「目標」と、それに対する進捗管理と「成果・業績」、そしてそのプロセスの評価が重要です。特にプロセスをどう確認、改善(コントロール)てきたかが自己調整です。この内容を時系列で振り返り、好ましいプロセスを褒めることによって、効果が得やすいということです。
 私がこれまでコンサルティングやアドバイス、支援(サポート)させて頂いた企業(組織)で確認されている効果として、自己調整ができている組織では、目標の継続(中長期的目標の達成)につながることが多いです。例えば、今期取り組んでいる目標を、必要に応じて来期以降も自律的、継続的にフォローしていくということです。更に、自己調整を意識できている上司ほど、部下にとってはフィードバック効果が高まるという結果も得られました。

②感謝として伝える:
 興味深いことに、「感謝」は「褒める」と同じ機能があることが確認されています。例えば、上司と部下の関係性(LMX)研究では、まず部下が職場で(自身の)価値を感じることとして、「感謝されること」を挙げています。職場で上司、先輩、同僚から「ありがとう」と感謝されると素直に嬉しいので、感謝につながる行動を繰り返すと確認されています。また、上司にヒアリング調査した結果でも、部下を褒める目的で、感謝を示す方法を意図的に選択する場合がある、という報告が一定数確認されています。実際に、私が過去にコンサルティングやアドバイス、支援(サポート)させて頂いた企業(組織)でも、フィードバック面談場面において、感謝の言葉を戦略的、効果的に活用している上司(マネジメント)は、部下との関係も比較的良好で、組織のパフォーマンスも高い傾向にあります。
 さらに、感謝の心理学的効果として、感謝をしたり、されたりすると、他者との関係が親密になるということが確認されています。「場(職場や仲間)に受け入れられている」という感覚と似たものを生む効果が得られます。このように、感謝は褒めることと同じ機能があるので、褒めるために感謝を伝えることは、一定の効果があると考えられます。

③テキストメッセージによって褒める:
 テレワーク環境やDX化の進展により上司と部下のコミュニケーションがデジタル化される傾向は高まっていきます。こうした環境下では、テキストメッセージによって褒めるプロセスが有効です。テキストメッセージは、語彙力、表現力が大きく左右する一方で、トレーニングを積めば誰でも一定程度上達することが可能です。特に口頭(Verval)コミュニケーションに偏っている昭和世代のマネジメントは、こうしたNon-Vervalコミュニケーションのスキルも高めていく必要があります。

 以上3つのポイントをご紹介しました。ここで勘違いして欲しくないのは、褒める前提として、企業(組織)が継続的に成長・発展していくためには、各人が目標を実施(達成)し続けることが大前提だということです。そのためには、上司(マネジメント)は、部下やメンバーのタスクマネジメントや業務的、心理的サポート、自身のセルフマネジメントを常に見直す(内省)する謙虚さも忘れてはなりません。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)