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2024年12月27日

経営参謀としての人事を考える

 人事の役割とは?古くて新しい、答えがありそうでない問いです。人事は、重要な経営資源である「人材」を管理する部署であり、人材採用、育成、評価、配置など、人と組織の活性化により事業を成長させる役割などといわれます。

 また、プロデューサー(Producer):人と組織を活性化させ、事業を成長させるために必要な施策(制度やシステム)を創造する役割、演出家(Director):人と組織を活性化させ、事業を成長させるために必要な舞台(職場環境)を創造する役割、フィクサー(Fixer):人と組織を活性化させ、事業を成長させるためにどうしても避けられないコンフリクト(異なる意見や要求のぶつかり合い)を調整し、望ましい方向に導く役割ではないかと言われることもあります。

 業種、企業規模により人事の役割はさまざまです。中でも言い得て妙なのは、「経営参謀」という役割でしょうか。
 
 この経営参謀という役割について、考えてみましょう。

 参謀という言葉は、元々軍事用語です。高級指揮官の下で、作戦・用兵などの計画・指導を受け持つ将校を意味します。戦国時代の黒田官兵衛や石田光成、日露戦争時、日本海海戦でバルチック艦隊撃破に導いた、勝利の立役者である秋山真之、中国三国時代に活躍した諸葛孔明などは特に有名でしょう。
 現在では、権力者や為政者を支えてあれこれ策略を立てる人物というイメージでしょうか。企業社会では、経営者の懐刀、番頭、知恵袋などと言われ、意思決定に大きな影響力を持つ人物として、陰に陽に活躍(暗躍?)している様子がうかがえます。

 歴史作家の半藤一利さんは、著書『コンビの研究 指揮官と参謀』の中で、参謀のタイプを次のように分類しています。

①書記官(側近)型:指揮官の意思を伝達するだけで、自分では判断しない。指揮官の知的・肉体的ロスを最小限にとどめる

②代理指導(分身)型:指揮官の身となって自分でも判断し、適切な指導、調整を行い指揮官を補佐する

③専門担当(独立)型:指揮官を補佐するが、同時に自分の専門に関しては、独自に判断し、指導する

④準指揮官(方針具体化)型:みずから権限をもって振る舞い、時に指揮官を乗り越えて、指揮官としての役割を果たす

⑤長期構想(戦略)型:長期的な戦略展望に取り組み、独自の構想を持つ思索型の参謀

 人事部門は、社内で参謀役だとか、調整役(リエゾン)だとか言われることがあります。戦略人事の重要性が叫ばれる中で、経営層に近いポジションで意見具申したり、経営者の思いや理想を言葉にしたり、経営と現場を繋ぐ役割を担ったり、組織間の軋轢や利害を調整したりといった役割をイメージしてのことだと思います。

 皆さんの企業で次のような課題はありませんか?

・事業承継のタイミングで外部から優秀なリーダーやマネジメントを招聘したい。

・スタートアップ企業として、創業者の個人的資質だけで邁進してきたが、そろそろ組織や人材を整備、拡充し、更なる成長を目指したい。

・わが社はオーナー企業。二代目に引き継いだタイミングで、組織風土を刷新したい。

・弊社はカオス状態の組織になっている。人事制度を整備し、組織として成熟させたい。

 正解(ベストプラクティス)がなく、わかっているけど着手できない、先送りしてしまう課題に対して、何かしらの価値(時には、経営層に対する厳しい苦言も)を提供できるかが参謀役ではないでしょうか。

皆さんの会社には、名参謀としての人事は何人くらい存在しますか?
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)