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2025年2月7日

何者かになりたいけど何者でもない若手社員 ~職場ソーシャルサポートのススメ~

 昨今、多くの会社の若手社員(主に20歳代)の声として、次のような内容を耳にすることがあります。

例えば・・・

・早く一人前になりたい。上司や先輩、クライエントから認められたい。
・バリバリ働いて、自分が納得できる成果(実績)を出したい。
・自分にしかできない仕事がしたい。
・専門性(知識、スキル)を身につけ、社内で一目置かれたい。
・これまで大学や大学院で学んできたことを活かしたい。

一方で・・・

・とにかく自分らしく働きたい。生活のペースを崩したくない。
・上司から褒められると嬉しいけど、注意や指導されると気持ちが下がる。
・同僚との関係は気になる。自分だけ目立つことには抵抗を感じる。
・他の会社の同世代の活躍をSNSなどで見ると、焦りを感じることがある。
・ブラックな職場は嫌だけど、ホワイトすぎる職場はもっと嫌です。

 ほんの一例ですが、彼らの気持ち(アンビバレントな気持ち)の一端が垣間見れるのではないでしょうか。一筋縄では理解できない複雑な思いを抱えながら日々仕事に向き合っているようです。i 

 プラスの意味では、専門性を確立し、仕事で具体的成果(実績)を挙げ、周囲に承認されることで、自分のポジション(居場所)を確立したい。そのためには努力も惜しまないということでしょうか。キャリア・アンカーという言葉もありますが、個人がキャリア形成していく上で、譲れないものにはとことん拘りたい姿勢です。

 一方で、マイナスの意味では、自分らしさを最優先したい。あまり干渉せず、温かく見守って欲しい。常に周囲のことが気になり、酷い場合眠れないこともある。といったところでしょうか。

 認知的不協和という言葉を耳にしたことがある方も多いと思います。矛盾する二つの気持ちを抱えた状態で、不快感を感じている状態を指します。不快感とは、自分で感じるというよりも、周囲の人が気づくことが多いようです。

 人間誰しも、何かしらの自己矛盾を抱えて生きていますので、それ自体は大きな問題ではありませんが、職場での、人材育成やマネジメントの観点ではどうでしょうか?

 若手社員の複雑な気持ちに向き合わず、距離を置いてしっまたり、別の価値観や考え方を一方的に押し付け、若手社員の感情に蓋をしてしまう場面はないでしょうか?

 私は、こうした若手社員を『何者かになりたいけど何者でもない自分』と捉えています。

 “何者かになりたい”とは、将来の理想の姿であり、そこに辿り着くまでの道筋(ステップ)のことです。人事的には、キャリアパスと言ってもよいかもしれません。

 “何者でもない自分”とは、現在の自分の姿であり、気に入っている点もあれば、気に入らない点もあります。毎日向き合っている自分です。

 何だそんなことか・・。それなら、若手社員に限らず、中堅やベテラン社員でも同じではないか・・。

 その通りです、理想の自分と現実の自分とのギャップに悩むことは、古今東西誰しも経験してきたことなのです。

 では、管理職や上司、先輩の皆さんは、職場でこうしたギャップに、どう向き合い、折り合いをつけてきたのでしょうか?少し思い出してみてください。

 そう。そこには、直接解決には繋がらなくても、ヒントや気づきを与えてくれる人が何人がいたハズです。

 自分が悩みや困難を抱えたときに、一筋の光を与えてくれる存在がいたハズです。

メンタルヘルスの分野でも、ソーシャルサポート(周囲の人からの心理的支援)と言って、こうした存在が過度なストレスから解放(癒し)してくれます。

そうなのです!

 令和時代の若者には、ソーシャルサポートが不足しがちなのです。

 職場においても、社員年齢構成が歪んでいたり、ハラスメントを過剰に気にして若手とのコミュニケーションが希薄になったり、人材不足や採用難から人を育成するリソースが不足したり、テレワークやリモートワークの普及で、そもそもコミュニケーション機会が減少してきたりといったことからソーシャルサポートは減少傾向にあります。

 だからと言って、かつての職場環境に戻しましょう!と言いたいのではありません。職場でもソーシャルサポートに値するようなコミュニケーション機会を意識しましょう!

 例えば、皆さんの職場では、ちょっとしたスキマ時間をどう意識していますか?

 会議と会議の間の5分間、客先へ移動する30分間、毎朝始業時間前の5分間、ランチの後のリラックスタイムなど、ちょっとしたスキマ時間に若手社員に声をかけてみてください。

 “最近どう?”の一言から職場でのソーシャルサポートの芽が出てくることがあります。

 職場でのソーシャルサポートに限らず、職場でのスキマ時間には、多くの気づきやヒント(マネジメント改善のスモールステップ)が隠されていることがあります。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)