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2025年8月1日

安易なマルチタスクにご用心

 マルチタスクという言葉をよく耳にします。複数の業務を同時に進行させる能力や行動を指します。

 ビジネス環境にスピードや変化が要求される時代です。マルチタスク環境で働くビジネスパーソンが大半なのかも知れません。特に、日々膨大な情報を処理する立場のマネジメントの皆さんは、上司や部下、同僚、顧客などからの命令、指示、依頼、相談、交渉などが多く、業務の優先順位付けに苦労しながら組織と個人の成果を追い求めていることだと思います。

 業務を進めていく上で社員個々の集中力はとても大切です。生産性や創造性を左右する重要な経営資源と言っても良いかもしれません。一方で、頻繁な会議、絶え間ないメールやチャット、SNSでの遣り取り、部下からの相談やOne on Oneミーティング。マルチタスクの常態化がマネジメントを疲弊させ、ストレスフルな状況に追い込み、集中力の持続を阻害します。

 ある調査では、職場管理職(マネジメント)多くは、1日平均で約15分しかまとまった業務(ワーキングスフィア)をする時間を確保できないとのことです。それ以外の大半の時間は、メンバーマネジメントや顧客対応などに追われ、細切れされた業務と中断や割り込みされた業務の対応に追われる毎日が続きます。

 こうした環境下では、企画書や提案書など集中力を持続させる業務を継続することは難しく、「いつ邪魔が入るかわからない」という不安感が心理的負荷を増大させてしまいます。

 頻繁な割り込みや中断は、数値の入力ミスや誤動作などのヒューマンエラーも誘発しやすくなり、手戻り作業が発生し、生産性低下の原因にもなります。

 こうした現場マネジメントの心理的負荷やストレス、フラストレーションに対して、人事担当者はもう少し意識的になるべきです。マネジメントのマルチタスクというとプレイングマネージャーという言葉に表徴されるように、論を待たない当たり前の働き方のように見做されますが、本当にそれで成果や生産性は上がっているのでしょうか?

 マルチタスク環境の全てが悪いわけではありません。特に経営意思決定に直結する精度や確度が要求される業務では、マルチタスクを徹底的に排除し、集中力を存分に発揮できるようにすることも大切です。一方で、業務が定型化され、熟練により正確性が担保されるような業務ではマルチタスクが有効です。マネジメント一人一人のマルチタスク環境を詳細に分析してみて、集中力を阻害する要因や働き方の選択肢を用意することが人事担当者の役割です。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科(現在は経営学研究科)博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において30年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)