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2026年9月18日

ひとり人事的 “そもそも退職金って” 

 「退職金」という言葉を聞いて皆さんは何を思うでしょうか。何千万というまとまった金額が受け取れる(住宅ローン返済や老後資金に充当)、大手企業と中堅中小企業での支給格差、正規社員のみが対象で非正規社員にはもらえない・・・。

 厚生労働省所管の令和5年就労条件総合調査によると、大学・大学院卒で勤続20年以上かつ45歳以上で定年退職を迎えた場合の退職金平均額は1,896万円とのことです。約2,000万円弱といった水準でしょうか。また、退職金制度がある企業は、全体で74.9%(ない企業は24.8%)となっており、制度上は、約4社に3社が何らかの退職金制度を持っています。

ワタミ退職金、業績を反映 部長以上に当事者意識 積立金最大2割増/赤字ならゼロ

部長職以上の社員を対象に、業績連動型の退職一時金制度を導入した。期初に定めた連結営業利益予想の達成率に応じて、年間積立額を変動させる。業績が上振れすれば積立額は最大2割増、営業赤字だとゼロになる。管理職に業績向上への当事者意識を持たせる狙いがある。(2026年9月9日日経)
 
ワタミの記事や昨今の退職金事情について、人事実務家たちと意見交換をしてみました。

■支給水準については、大手企業と中堅・中小企業で格差が拡大している印象です。

■主に2000年代に議論された、前払い、業績ポイント制など企業の財務インパクトを加味し、即時決済するような考え方は、結局流行らなかったように思います。人材のリテンション(定着)という観点でマイナス面が大きく感じています。

■退職金の議論になると、人事だけでなく、経理財務や株主、労働組合など多くのステークホルダーが絡むので、人事部門としても難しいテーマです。

■退職金制度とセットで議論されるのが企業年金制度ですね。確定拠出型、確定給付企業年金、キャッシュバランスなどテクニカルな議論も多く、人事担当者も相当勉強しないとついていけないですね。

■社内の意識でも、賛成派と反対派にわかれますね。Z世代以下の若手社員は、働き方の保守化傾向なのか、年功序列的な賃金や支給額が勤続年数に比例する退職金制度に肯定的な意見が多いような気がします。

といった実務家ならではの鋭い(現場目線)意見が多かったです。

組織・人事マネジメント実践家である私から、経営参謀型人事やひとり人事の視点で「退職金」を巡る動向についていくつかコメントしたいと思います。

■本来、退職金には、①賃金の後払い②論功行賞③退職後の生活保障という基本的性格があります。冒頭のワタミの退職金改訂では、この基本的性格に業績連動という側面を強調した内容になっています。

■2019年に金融庁が、所謂「老後2,000万円問題」つまり、公的年金だけでは高齢夫婦の無職世帯で毎月約5.5万円が不足し、30年間で約2,000万円の取り崩しが必要になるとされた試算に端を発する話題で企業の退職金に関しても注目が集まるようになっています。

■多くの企業の退職金制度内容を分析してみると、以下の特徴があります。
・組織、個人問わず業績を反映した支給額を導入している企業は思ったほど多くない
・勤続年数係数、自己都合/会社都合区分による支給額の決定が80%以上
・ごく一部の企業でポイント制退職金を導入している。ポイント付与の内容は、等級や役職という社内ポジションに根拠を求めるものが多い。
・従業員の既得権益化しているので、制度を改訂しようとすると、社内で多くの反発が出てくる。結果として何十年も見直しされていない規程(現実と乖離)を運用しているケースが多い。

 退職金を戦略的組織人材マネジメントのオプションとして位置づけることが理想です。賃金、賞与に加えた第三の報酬オプションとして、優秀な人材の中長期育成とリテンションのための投資コストと位置づけます。サクセッションプランとの接続を意識するイメージです。この場合、どうしても優秀人材の選抜というプロセスが影響してきます。求める理想の人材イメージを言語化し、社内でイメージを共有しておくことが必要です。当然、ハイパフォーマー(高業績者)だけが退職金の支給対象ではありません。ミドルパフォーマーについても充分に配慮した制度設計が必須です。

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経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科(現在は経営学研究科)博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において30年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)