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2024年1月30日

組織アイデンティティから考える「我が社らしさ」

 Z世代の価値観変化、人口減少、働き方改革等々により人財採用難に苦悩している企業は増加しています。人材会社マイナビ調査によると、90%に近い企業が2023年卒の採用活動を厳しかったと感じており、「母集団の確保」や「選考への動員」を課題に感じていると分析しています。恒常的な売り手市場が予測される中、求職者に選ばれる企業とそうでない企業との格差はますます拡大します。企業が継続的に成長・発展していくために、人的資本の確保は欠かせません。
 では、どうすれば選ばれる企業になるのでしょうか。応募者母集団確保(媒体戦略や採用イベント開催)など、小手先の改善の前に、そもそも「我が社らしさ」つまり、我が社の存在価値はどこにあるのかを考えてみるべきです。
 その際、組織アイデンティティという概念が参考になります。アイデンティティとは、一般的に「自分らしさ」と理解されることが多いです。これは、個人が「私はこういう人間だ」と自分自身を理解し、その特徴を自覚している状態を意味します。では、組織アイデンティティは何かというと、組織レベルの自分らしさ、言い換えれば「我が社らしさ」のことです。つまり、組織が持つ独自の特徴や個性のことを意味します。ここで大事なのは、組織アイデンティティは、組織内のメンバーが認識を共有している、我が社の核となる特徴であることです。
 組織アイデンティティを考える上で注意が必要なのが、経営理念など、組織の特徴を明文化したり周知するだけでは不十分だということです。メンバーに浸透していないならば、組織アイデンティティとは言えません。例えば、経営層が「私たちは人との繋がりを重視します」と言うだけでは、それはただの声明であり、お題目です。組織アイデンティティは、従業員が「我が社は人との繋がりを大切にしている」と心から感じ、認めている実態が必要になります。
 メンバーの共通認識を得た「我が社らしさ」、つまり組織アイデンティティが自社に定着すると、組織内の意思決定や行動指針にブレない方向性が生まれ、組織全体をより強固に、一体感を持って前進させることが可能になります。他にも、組織アイデンティティは、従業員の貢献意欲や会社のパフォーマンスを向上させることに影響します。
 組織アイデンティティを理解し、育て、理解を深めていくことにより、結果的に採用時に選ばれる企業にもなるのです。皆さんの企業(組織)でも、一度「我が社らしさ」について、腰を据えて考えてみてはいかがでしょうか。
経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長 岡田英之

経営統括本部長・組織人事コンサルティング部長

岡田英之

1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。
その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等において20年間以上に亘り、人事及びコンサルティング業務に従事する。
現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員
■2級キャリアコンサルティング技能士
■産業カウンセラー
■大学キャリアコンサルタント
■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)